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第143回e4c-village協議会 報告

皆様、お元気にお過ごしのことと思います。
今年は、恒例の新春放談も久し振りに丹羽さんを迎えて盛況に過ぎ、
早や2月に入りました。来年度事業計画もそろそろ確定の時期でしょう。
一方で年度末の駆け込みもあるかもしれません。季節はいよいよ三寒四温です。
春一番も近いようです。啓蟄という言葉があります。冬ごもりの虫が這い出てくる
季節の意です。人も同じです。いよいよ蠢き始めます。こわばった筋肉を
ほぐしてから、おもむろに動き始めましょう。無理なく、怠りなく!

さて次回協議会は予告通り「植物工場 第2弾」を採り上げます。2月中に開催
するつもりでしたが、会場、講師の都合で3月にずれ込みました。ご容赦ください。

先週、とりあえず「次回開催案内」だけはお送りいたしましたが、この間お話を
お願いする講演者の方とも話をして、だいぶ状況がはっきりしてきました。

前回の第1弾は2010年5月に採り上げました。そもそもは元リコー役員で、
光ディスク分野の友人でもあった坂巻氏にご教示を受け、企画したテーマでした。
農業の話ではなく、農業の工業化というポイントが採り上げた最大の理由でした。
経産省課長の杉本さん、財団法人の専門委員会委員長の高辻さん、それに
坂巻さんを交えて、現状とこれからの展望をお話しいただきました。当時は
パソナ、三菱化学など企業が植物工場を始めて話題沸騰の時期でもありました。

あれから5年。気が付いてみると、最近はあまり植物工場のことを聞きません。
昨年、後でご紹介する、「や組」の前野欽哉氏に、友人を介してお目に掛かり、
久し振りに植物工場に"絡む"お話を伺いました。そう、絡むのであって、そのも
のではありません。前野さんは、いわば「植物工場からの転進組」なのです。
この話も面白ったのですが、ついでに植物工場はどうなったのか、気になり始めま
した。時々耳にする植物工場は、オランダの競争力とか、三菱化学の中東での
事業くらいです。どうなったのでしょうか。すぐに火付け役の坂巻さんに聞いてみました。

坂巻さんに聞いてみると、騒がしくはなくなったが、その分しっかり地に足をついた
進化をしているとのことでした。ただ課題もはっきりしてきて、坂巻さんご自身は
その課題に取り組んでおられるとのことと、その実証実験的な取り組みを実際に
地方の自治体と組んで実行なさっておられることが分かりました。その課題とは、
エネルギーコストです。植物工場で栽培された野菜は高い。農業の工業化は
大きなメリットがあるが、普及を妨げる大きな阻害要因がエネルギーコスト
なのです。坂巻さんはバイオマスを検討していらっしゃるそうです。さらに、坂巻さん
がおっしゃるのが、日本の植物工場の取り組みには、全体的な戦略、構想力と
実行力が欠けているという点です。個々の技術の開発などは採り上げられても、
それがぶつ切りで、全体の整合性とかが欠けているというのです。
坂巻さんには、この5年の植物工場の概況、その中で見えてきた課題、解決への
取り組み、全体の現状と動向、そして展望をお話しいただければと考えています。
もちろん根底にビジネスとしての競争力という視点があります。単なる学問として
ではなく、です。何かいっぱいお願いしているようで恐縮です。

次は、必ずしも発表の順ではありませんが、実際に植物工場をビジネスとして
継続していらっしゃる三菱化学さんです。ご紹介いただいたのは、執行役員の
和賀さんです。機能化学本部の本部長兼植物工場事業推進室長でもいらっ
しゃいます。分かりやすく丁寧にお話をしてくださいました。植物工場にエネルギー
コストという課題があることは事業を推進するうえでも前提です。したがって高い
野菜をどうやって事業にしていくのがポイントになります。高くても買ってくれると
いうことが必要条件です。まずは商品としての野菜、そして買ってくれる顧客。
この二つのマッチングです。三菱化学のビジネスは植物工場システムを売る
ことです。顧客は農家ではありません。空いた工場を持っている企業とか、
高架下が空いている鉄道会社とか、がお客様になります。お聞きしていると
ビジネスモデルも面白い。まるで三菱化学の光ディスクビジネスの練り直しの
ようなのです。設備を売り、栽培法を売り、メンテを売り、材料(種)を売り、
新規栽培野菜の開発を売り、そして顧客にはさらにその野菜の売り先の確認
までする、という念の入れ方なのです。話はまだまだたくさんあります。
「エグミ」などの味の話、等々。ここで長々と書くより、実際に和賀さんから直接
お話を伺った方がいいでしょう。海外事情も伺いたいと思っています。どうも
海外にもっていくときにその国の経済発展に絡む条件があるのだそうです。

そして最後は、「や組」の前野さんにお話を伺います。前野さんも以前農業の
IT化に取り組んでおられたそうです。ただIT化と言っても基本は農業だということ
で、ある時農家の人に「お前は百姓にはなれない。」と言われ、忽然と悟った
そうです。自分がやれることをやろうということで有機農家のネットワークつくり
とか、マーケットつくりとかに転進しました。そして本当にうまい野菜とは何か、
を追求してきているのです。たどり着いたのが「バクテリアの利用」です。
日本の農法は基本的にバクテリアを利用した、栄養分豊かな植物栽培なのだそう
です。さらにそのうまい野菜を売る仕組み、野菜をうまく食べてもらうレシピ-
を開発して、今やマルシェまで開いているそうです。植物工場とは直接かかわら
ないかもしれませんが、農業にかかわるIT化や工業技術という視点からは大いに
かかわってきます。日本の農業の競争力は、TPPの議論を待つまでもなく、日本
の重要課題の一つでもあります。もう一つの「農業の工業化」という点で改めて
みてみたいと思います。

これからは、自分では「関係ない」と思われていたことが急に身近になったとい
うことが多々起きてくる予感があります。異分野、異業種との思わぬ遭遇です。
気付いてからでは遅い。想定があってこそ気付くのです。今年は、この植物工場
を皮切りに、異業種への関連付けにも注意を向けたいと思います。挑戦に終わり
はありません。

今回も是非奮ってご参加下さい。語り合いましょう。それでは会場で!!

株式会社イーフォーシーリンク  横野 滋